🪟 窓の位置で人生が変わる？　　　　　　　　　　　　 　― 荒川区の家づくりで考える、光と視線の設計 ―

はじめに：都市の中で“心地よさ”をどう作るか

東京都荒川区。
下町らしい路地や町工場が並ぶこのエリアでは、
住宅が密集し、日当たりや視線の抜けに悩むことが少なくありません。

そんな環境の中でも、「窓の位置」ひとつで家の印象も暮らしの質も大きく変わることをご存じでしょうか。
今回は、私たちが設計で大切にしている「光」と「視線」のコントロールについてご紹介します。

光のデザイン：明るさより“時間”を設計する

都市部の住宅では、「明るくしたい」というご要望を多くいただきます。
しかし、私たちが重視しているのは“明るさの量”ではなく、**“光が入る時間と方向”**です。

たとえば、

• 隣家が迫る敷地では、上部に**高窓（ハイサイドライト）**を設けて空から柔らかい光を採り入れる。
• 東向きの壁に細長いスリット窓を配置し、朝日が壁を滑るように差し込むよう設計する。

こうした工夫で、光が自然に室内を動き、時間の移ろいを感じられる住まいになります。
光を設計することは、暮らしのリズムをデザインすることでもあるのです。

視線のコントロール：遮るより“逃がす”設計

荒川区のような密集市街地では、通行人や隣家からの視線も気になります。
しかし、カーテンで閉じてしまってはせっかくの採光が失われます。

私たちは、**視線を完全に遮るのではなく、うまく“逃がす”**設計を心がけています。
例えば、

• リビングの窓を道路から少しずらして配置することで、視線が直接入らない角度をつくる。
• 視線の高さより上に水平の連続窓を設け、空だけを切り取る。
• 外部に格子や植栽を設けて、光をやわらかく受け止める緩衝帯にする。

窓の位置をわずかに調整するだけで、開放感とプライバシーの両立が可能になります。

まとめ：窓の位置がつくる、日常の心地よさ

窓は、図面上ではただの四角い記号に見えます。
しかし実際は、光・風・景色・視線・時間をコントロールする、住まいの中で最も繊細な設計要素です。

荒川区のような都市部では、限られた条件の中でこそ、
“どの位置に、どんな意図で窓を設けるか”が住み心地を左右します。

私たちは、光を整え、視線を導き、街と穏やかにつながる窓を大切にしています。
日々の暮らしの中に小さな「光の景色」を見つけられるような住まいを、これからも設計していきたいと思います。